とれいん工房の鉄道省私文書館

鉄道関係の情報を中心としたブログ。主に未成線や廃線、鉄道史、宮脇俊三、関西の鉄道、ローカル線など鉄道趣味の外縁部を紹介します。

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宮脇俊三書評40作 (9)「旅の終りは個室寝台車 」

旅の終りは個室寝台車 旅の終りは個室寝台車
宮脇 俊三 (1987/06)
新潮
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 ローカル線紀行が中心だったこれまでとは違い、列車を乗り継いだ旅を集めた作品になっている。
 今回の「曾良」役は、『小説新潮』の藍孝夫氏。阿川弘之作品にも出てくる編集者だ。ただ、鉄道については全く関心がないとかで、宮脇「芭蕉」の解説にもなかなか耳を傾けようとしない。かといって道化役を演じるわけでもなく、ただただ退屈そうな顔で師匠について行くだけである。



 東北新幹線の本格開業によって東京から札幌までわずか16時間で乗り継ぐことができる……と嬉々として語りかける宮脇。でも、藍氏はまともに反応しようとしない。「それで、ご本人はどうなんですか。自分に同情しながら乗っているってわけですか」と問い返しても、「そんなことはありません。いい経験だと思ってます。」との答え。皮肉なのか素直なのかそれも分からない。
 とりあえず、門司発福知山行きの最長客車普通列車824レの旅、豊橋から辰野まで92駅連続各駅停車の旅、豊橋~和歌山~佐賀関~熊本と中央構造線を歩く旅……と宮脇らしくない難行が続く。なにはともあれ、児戯に類する目標を立てて一所懸命になっているバカらしさが文中に見え隠れしていて、そのズレがほほえましかったりする。
 こうしたネタ自体、種村直樹氏や『鉄道ジャーナル』なんかと共通するところもあるが、そもそもの主題は全く違う。鉄道や列車の現状を報告しよう……との社会派的要素はこれっぽっちもない。いつしか鉄道嫌いでクルマ好きの藍氏をいかにして困らせてやろうか……という所にポイントはズレていく。鉄道の旅に退屈至極の藍氏。困り果てた姿にニヤニヤしている宮脇。そんなイタズラ心があちこちにちりばめられている。
 師匠と同じ価値観を共有していないと言う点では弟子としては最低の部類にはいるが、彼の感想という態度というのは至極まっとうな常識人ならではのものだと思う。だからこそ宮脇の偏執狂的側面が際だってくるのだ。
 編集者との珍道中はこの後もたびたび描かれているが、著者との距離感が微妙に保たれていることで、この作品が一番生き生きと描かれていると思う。

          【1984年 新潮社】
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  1. 2006/09/14(木) 23:19:32|
  2. 宮脇俊三の話

プロフィール

もりくち

Author:もりくち
関西在住の鉄道マニア兼バックパッカー。「とれいん工房」として同人誌を多数発行。2001年に「鉄道未成線を歩く 私鉄編」、2002年に「鉄道未成線を歩く 国鉄編」をJTB出版事業局(現、JTBパブリッシング)から刊行しています。日々の話は、下のリンク先にある「とれいん工房の汽車旅12ヵ月」へ。連絡先はmalmori●nifty.com。

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