中央公論社時代に『日本の歴史』など歴史全集の編集に携わったこともあり、宮脇の歴史に対する造詣は深い。過去の各紀行作品にもその片鱗が随所に散見されており、文章の奥行きと読者の想像力を深めてくれる。
本作は『日本通史の旅』として連載された紀行文を集めたもので、各地に点在する史跡巡りを素材としている。歴史年表に従って年代順に訪問していくのが奇抜と言えば奇抜であるけれども、もちろん歴史が主題となっているので鉄道の出番は少ない。そこがマニアにとっては物足りない。
かくいう私も、『小説現代』での連載をたまにチェックをしていたものの、それは半ば義務的に立ち読みしていただけ。本書の初版が刊行されたときも、受験勉強でドタバタしていたこともあって見逃している。いちおう文学部の歴史系学科を目指していたのだが、イマイチ宮脇歴史エッセイにまで手を伸ばす気にならなかったのだ。大阪界隈の鉄道マニア御用達の旭屋書店鉄道売場にもほとんど置いてなかったのだから仕方ないか。
手にしたのは、受験が終わった後に出された第三刷である。読了後、不明を詫びたくなった。
旅は対馬から始まる。日本という国が初めて文献に登場するのが『魏志倭人伝』。その冒頭に取り上げられるのが対馬国ということになる。小倉からフェリーで対馬北端の比田勝に向かうが、いきなり元寇の舞台となった史跡へ向かってしまう。その後、対馬を南下して壱岐へ向かう。その2ヶ月後には出雲、そして吉備へと旅する。
そこにはいつもと同じ宮脇節が満載で、史跡があると言うだけで何の変哲もない風景が生き生きとした姿を見せ始める。史跡を前にしたときのめちゃくちゃな妄想と、勝手な歴史観による推理の連続。『古事記』などの史書をマヤカシと断じ、中大兄や鎌足に冷酷さを、聖武天皇に弱さを、道鏡に純愛を感じ取る。門外漢ならではの奇抜さと素人っぽさが気持ちよい。
しかし、そうした発想も、歴史学者たちと触れ合う中で培われた博識をベースにしている。学説を押さえた正確な情報が基礎としてあるからこその賜物である。そこには、ただの思いつきとし次元を異にする深まりが見受けられる。
【1990年 講談社】
- 2006/09/21(木) 19:55:41|
- 宮脇俊三の話
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紀行紀行は、旅行の行程をたどるように、体験した内容を記した文。旅行記とも。.wikilis{font-size:10px;color:#666666;}Quotation:Wikipedia- Article- History License:GFDL
- 2007/07/28(土) 16:33:55 |
- 小説耽読倶楽部