とれいん工房の鉄道省私文書館

鉄道関係の情報を中心としたブログ。主に未成線や廃線、鉄道史、宮脇俊三、関西の鉄道、ローカル線など鉄道趣味の外縁部を紹介します。

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【宮脇】時刻表2万キロの足跡を辿る旅「神岡鉄道線・富山港線」 その3

 はやる気持ちを抑えつつ、時計を確認する。宮脇は8時15分頃に北口に現れ、岩瀬浜駅発8時31分の列車に乗ろうとタクシーの後部ドアを開けた。その間、わずか16分。
 先ほどの電車の折り返しは岩瀬浜を8時35分に発車する。宮脇と同じ条件でやるならば、8時19分頃にタクシーを捕まえればいい。まだ10分以上ある。富山ライトレール用に建設されている新駅のホームや併用軌道の路盤を見物しつつ、時間を潰す。

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 そして、8時19分。いい頃合いになったので、タクシー乗り場へ向かう。これから宮脇のタクシー追跡劇の再現だ。
「どこまで?」
岩瀬浜駅まで」
「えっ、岩瀬浜に駅があるの?」
 予想外の反応だった。タクシー運転手なのに岩瀬浜駅の所在地が分からない。おい、こりゃどうすればいいんだ。「まあ、とりあえず岩瀬浜に行ってください」というと、ゆっくりとアクセルを踏み始めた。
 児戯に類した乗車目的は、なるべくひとにいわないですませたい。今ならば、富山港線に乗りたいからタクシーに乗ったといえば、それなりに通じるとは思う。鉄道趣味もそれだけの浸透と拡散は進んでいる。ただ、三一年前にそうやって岩瀬浜に向かった作家がいて、今日はその足跡を辿っていると説明してもまず伝わらない。私も、なるべくなら岩瀬浜の駅付近にもっともらしい所用があるような顔で乗っていたい。

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 富山駅から北に延びる道路は渋滞していなかった。制限40キロの道路をきちんと60キロのスピードを保ち、順調に進んでいく。確かに信号の数も多かったが、それぞれがきちんと連動しており、私の乗ったタクシーは停止することもなかった。
 工場の脇を通ると、大広田駅。次は東岩瀬駅である。8時29分、次の電車までまだ時間がある。
 8時30分。タクシーは東岩瀬駅前をゆっくりと通過していく。一瞬躊躇したが、時間はまだ余裕がある。そのまま岩瀬浜駅に行ってもらおう。小さな橋で運河を渡ると、
「ああ、ここね」
と運転手は右へハンドルを切った。岩瀬浜駅前には8時33分到着。所要時間14分。電車よりも速い。ただ、JRだと二〇〇円のところ、タクシーは二、三二〇円かかった。
 岩瀬浜は無人駅になっているが、木造の駅舎が残っている。古い感じのいい建物だが、ライトレールの改良工事の際、撤去される運命にある。

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 ホームに上がると、先ほど富山駅で見送った475系が停車している。やがてベルが鳴り、写真撮影していたマニアたちも扉に集まってくる。私もそれに加わる。
 なんとなく、私と目を合わせた車掌は不思議そうな顔をしている。三十分前に富山駅ホームに残っていたマニアがなぜ岩瀬浜駅にいるのか。まあ、詳しく説明する義理もないし、ニヤリと笑みを浮かべてそのまま乗り込む。定刻8時35分に発車。

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 さて、この後、宮脇の跡をたどるなら、高岡へ向かって氷見線を潰さねばならないのだが、なんとなく気が失せた。今の状況では越美北線や国鉄バスには乗れないんだし、初志を貫徹する必要はない。ならば、最初から宮脇の足跡を辿る旅なんて企画しなければ良かったのだが、それはまたそれ。とりあえず、富山~岩瀬浜間でのタクシー利用ができたわけだし、自分的には満足だ。
 とりあえず、今日の午前中は富山港線の各駅を訪ねてみることにしよう。次の東岩瀬駅までは一・一キロ。わずか二分後の8時37分に到着する。ホームに降り立つと、さっきの車掌が走ってくる。とりあえず初乗りの一四○円を払わねばならない。笑顔で「ありがとうございます」と声をかけて、再び車掌室に駆けだしていく。
 まあ、この数ヶ月、たくさんのマニアが名残乗車で押しかけ、一駅、二駅で乗ったり降りたりを繰り返しているのだろう。車掌にとって運賃の収受はかなり大変な作業だ。はっきり言えば面倒だと思う。こちらも申し訳なくは思う。ただ、お互い、細かい詮索をしないというのが礼儀である。私は東岩瀬駅付近にもっともらしい所用があるような顔をして、堂々と降りることにした。
 富山行きは定刻より30秒遅れて発車。それを見送り、私は無人の改札を出た。

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  1. 2006/09/30(土) 10:23:46|
  2. 宮脇作品の痕跡を辿る旅

プロフィール

もりくち

Author:もりくち
関西在住の鉄道マニア兼バックパッカー。「とれいん工房」として同人誌を多数発行。2001年に「鉄道未成線を歩く 私鉄編」、2002年に「鉄道未成線を歩く 国鉄編」をJTB出版事業局(現、JTBパブリッシング)から刊行しています。日々の話は、下のリンク先にある「とれいん工房の汽車旅12ヵ月」へ。連絡先はmalmori●nifty.com。

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