とれいん工房の鉄道省私文書館

鉄道関係の情報を中心としたブログ。主に未成線や廃線、鉄道史、宮脇俊三、関西の鉄道、ローカル線など鉄道趣味の外縁部を紹介します。

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【宮脇俊三と中公 その5】「風流夢譚」事件に始まる社内混乱、そして無期限スト突入

 だが、この六八年の末、中央公論社を揺るがす無期限ストが発生したことで、会社側と組合側との調整役として宮脇も巻き込まれることになるのであった。
 騒動のきっかけとして、六一年二月に起きた「風流夢譚」事件を見逃すことはできない。
 その前年、天皇家をパロディーにした深沢七郎の小説「風流夢譚」が『中央公論』誌に掲載されたのだが、それに対して、右翼勢力が皇室に対する名誉毀損ではないかと抗議活動を展開していた。宮内庁や政治家たちも介入し始め、事態はきな臭さを漂わせ始める。
 その渦中で右翼青年が中央公論社の嶋中鵬二社長宅に侵入して家政婦を殺害、雅子夫人に重傷を負わせる。いわゆる「風流夢譚」事件である。

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 この背景には、六〇年安保闘争をきっかけとして左翼の反政府運動が力を帯びつつあったことへの保守・右翼勢力の危機感が見え隠れしている。比較的、リベラル左派に好意的な執筆者が『中央公論』誌に名を連ねていたことへの反発もあった。
 この事件後、中央公論社は迷走する。動揺した嶋中社長は蟄居状態になり、執筆した深沢は警察に匿われながら逃避行を続け、雑誌掲載の責任者である竹森清編集長は追われるように退社する。右翼テロに対して毅然として態度を貫くとの声明を新聞紙上に出すものの、その直後に声明を言い訳するような「お詫び」の文章を社告として掲載している。
 そして、現場に復帰してきた嶋中社長の指示により、『中央公論』誌の編集次長は進歩派に批判的な粕谷一希(後に編集長)に代わり、その目次は高坂正堯や梅棹貞夫ら保守系の執筆者が占めるようになった。
 同じ年の十二月、嶋中社長は、天皇制特集を組んで配本直前になっていた『思想の科学』誌の発行中止を指示し、幹部たちは完成していた冊子を断裁、廃棄処分にした。それと共に、予定原稿を右翼や公安調査庁に提出する。先の「風流夢譚」事件のこともあり、天皇問題の取り扱いに躊躇したわけだ。

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 そんな弱腰な会社側の態度に対して、『思想の科学』の鶴見俊輔竹内好らのグループは「言論の自由を侵害している」と反発し、執筆拒否を通告する。安保闘争の影響で進歩派や左翼の主張に同調しがちであった社員からも次々と不満の声が出てくる。新現実主義者たちが『中央公論』の書き手の中核となり、『思想の科学』グループと相反する論陣を展開するようになったことも、事態をややこしくした。林房雄の「大東亜戦争肯定論」が連載されたのもこの時期である。いつしか『中央公論』には、進歩派や左派を排除するような雰囲気が漂い始めていた。
 宮脇は、『中央公論』編集長だった六六年、執筆拒否を続ける鶴見らのグループと嶋中鵬二社長との仲介に奔走する。右傾化していると批判のあった誌面のバランスをとるためにも、論壇で一定の影響力を持つ進歩派の有力論者が欠けているのは問題であると判断したからだ。
 両者の会談の席を持つまでに漕ぎつけるが、竹内と日高六郎は、終始弁明に努めるだけで歯切れの悪い嶋中社長に反発し、交渉は決裂してしまう。
 こうした会社側の曖昧な態度に対し、組合側は竹内らの主張に同調して反発を強める。それと共に、給与や労働条件の改善という側面と共に、「言論の自由」や「職場の民主化(編集会議の開催権)」、「粕谷『中央公論』編集長の処遇」(退陣要求)といった出版社のあり方、経営方針に対する要求を突きつけ始めた。
 左翼活動家と関係の深い社員が闘争を扇動した上に、組合の動きを軽視した会社側の対応のまずさもあり、問題はいっそう複雑になる。いつしか戦後の出版史において希有とも言える「言論の自由」を巡るイデオロギー対立が表面化するようになった。
 六八年十二月十二日、組合側は無期限ストに突入。座り込みやデモを展開し、会社側に全員団交を要求する。
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  1. 2006/12/12(火) 04:41:47|
  2. 宮脇俊三と中央公論社

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もりくち

Author:もりくち
関西在住の鉄道マニア兼バックパッカー。「とれいん工房」として同人誌を多数発行。2001年に「鉄道未成線を歩く 私鉄編」、2002年に「鉄道未成線を歩く 国鉄編」をJTB出版事業局(現、JTBパブリッシング)から刊行しています。日々の話は、下のリンク先にある「とれいん工房の汽車旅12ヵ月」へ。連絡先はmalmori●nifty.com。

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